相続税の納税

相続税の納税方法は、全部で3種類ありますが、金銭を一括で納めるのが原則です。
ただし、それが難しい場合に特別な納税方法として延納と物納という制度があります。
延納は何年かに分けて納める方法で、物納は相続した財産そのもので納める方法です。
通常の納税が難しく、延納・物納を希望する場合、相続税の申告期限までに手続きを
しなければいけません。
相続税の納税期限は、申告期限と同じで、相続開始を知った日(被相続人の死亡した日)の
翌日から10ヶ月以内です。 また、期限までに納めなかったときは延滞税がかかりますので
注意してください。それでは、納税方法について下記にて説明致します。

納税の手続きについて

■ 相続税の納付場所

税務署・金融機関・郵便局の窓口

■ 相続税の納税の方法

原則 金銭による一括納付
例外 延納(金銭による分割納付)
物納(金銭以外の相続財産による一括納付)

■ 申告や納税をしなかった場合の延滞税

相続税の申告と納税の期限は、相続開始を知った日(被相続人の死亡した日)の翌日から10ヶ月以内となっています。それまでに、申告や納税をしなかった場合、重い税金がかかります。 延滞税の種類と割合などは、下記の表をご確認ください。

延滞税 税金の納付が遅れた場合(納付が期限後の場合)
追加納付した税金の年14.6%
(2ヶ月以内「年7.3%」と「日本銀行が定める基準割引率+4%」のいずれか低い方)
過少申告加算税 誤って、少なく税金を申告した場合
  • ・自主的に修正申告書を提出した場合は0%
  • ・税務調査により、修正申告書を提出した場合や更正があった場合は追加納付した
     税金の10%
  • ※追加納付税額が「期限内に申告した税金」または「50万円」のいずれか多い金額を
     超える部分に対しては15%
無申告加算税 申告書を提出し忘れた場合
  1. ・自主的に申告期限を過ぎて申告書を提出した場合、税金総額の5%
    (申告が申告期限から2週間以内に行われれば0%)
  2. ・税務調査により申告期限を過ぎて申告書を提出した場合や決定があった場合、
     税金総額の15% (納付税額が50万円を超える部分に対しては20%)
重加算税 財産を隠したり、証拠書類を偽装した場合
申告書を提出した場合は、追加納付した税金の35%
申告書を提出していない場合は、追加納付した税金の40%

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■ 通常の納税

金銭にて一括で納付します。
この納税方法が原則であり、他の2種類の納税方法については、この方法で納税が出来ない場合に利用します。以前は認められていた延納の要件である納付困難理由について、現在は税務署の対応が厳しくなっております。
例えば、老後資金に現金が必要等という理由でも以前は延納が認められていましたが、今ではそのようにいかなくなってきており、老後資金を作るための株式や投資信託であっても、それを処分して支払うように指導してくることがあります。

■ 延納(分割納付)

延納とは、相続した財産が現金化が難しい不動産などの割合が高い場合など、期限までに 納付できない時に設けられている制度です。
税務署も、自宅などの売却すると困ってしまう不動産を処分してまで相続税を納めるようにと強制はしません。
不動産を売らなくても、収入の中から毎年払うことができれば延納の申請を認めています。
ただし、預貯金があればまずそれを充て、預貯金が足りなければ株式や債券などの有価証券を処分して充てるようには言ってきます。それでも足りない部分のみを延納として認めるのです。
なお、延納をする場合、原則として担保提供が必要となります。

1.ロ-ンのように分割支払いのため、利子税がかかってきます。
2.延納期間や利子税の税率は、相続財産の中身によって異なります。
3.一定の場合を除き、担保を提供しなければなりません。

延納を認めてもらうためには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 相続税額が10万円を超えていること
  • 金銭一括納付が困難であること
  • 所定の担保を提供すること
    (ただし、延納税額が50万円未満、かつ延納期間が3年以下の場合は担保は不要)
  • 納期限までに「延納申請書」を提出すること

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■ 延納期間

延納の期間については、相続財産中の不動産等の占める割合に応じて、15年や20年といった延納期間(最長期間は20年)が設けられています。その期間の中で納税者が決めることになります。
例えば、不動産等の割合が3/4以上の場合には、不動産等に係る相続税の最長延納期間は20年となります。 「最長」で20年ですので、予定よりも早く10年で支払ってしまうことも可能です。
また、いわゆる繰上げ返済も可能です。期間内の納付については、柔軟性を持っています。

■ 利子税

利子税の割合(金利)は、延納期間と同様に相続した財産の中で不動産等の占める割合に応じて決められています。例えば、不動産等の割合が1/2以上の場合には不動産等に係る利子税の割合は、
年2.3%となっています。

※不動産等の割合が1/2以上の場合、不動産等に係る利子税の割合は、原則年3.6%です。  
 この原則に、日銀が定める基準割引率(旧公定歩合、平成20年9月30日現在0.75%)を加味して
 算出することになっており、計算の結果上記の2.3%となります。  
 ただし、相続した財産の内容により、割合の年率は変わってきますので注意が必要です。

■ 延納の注意点

延納制度を活用することによって資産の売却をしなくて済むことがあります。
しかし、いくつかの問題点もあります。

  • 延納税額及び利子税は、不動産収入などの経費にすることが出来ません。  
    その為、税引き後の所得から返済することになり、資金繰りが厳しくなります。
  • 収益物件で延納分を支払う計画が不動産収入の減少や、震災で建物が損傷し、
    延納した分を払いきれなくなってしまうことがあります。
  • 不動産の価値が高い時に相続した土地の価格が下落した為、売却時期を遅らせ、
    譲渡税(所得税・住民税)の取得費加算の特例が使えなくなってしまってしまい、
    結局、納税するために当初より多くの土地を売却することになってしまった。

延納している相続税を物納に切り替えることもできます。
物納収納額は切り替えを行った時の評価額になります。なので、物納する土地や不動産が 値上がりしていれば助かりますが、逆に値下がりしているとより多くの資産を手放すことに なりかねません。
なので、先に延納の手続きをしておいて、不動産価値が出てから物納に、と考える人も偶にいますが、不動産投資と同じだけのリスクがあり、更にそんなリスクを犯すほどの得もないので、安易な切り替えを期待するのはやめた方が良いです。 また、延納は基本的に元本均等返済であり、更に年一回返済です。一度に払う金額はかなりの額になることも留意してください。

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■ 物納

相続で取得した財産のうち、土地や建物など換金が難しいものが大部分で、金銭で一括納付することはもちろん、延納制度を用いても納付できずに相続税額が残ってしまうということがあります。
この場合、税務署長の許可を得て、有価証券や不動産などの現物により、相続税を納付する制度が物納です。

1.手元に現金を残しての物納は、原則認められません。
2.管理または処分が難しい財産は、物納が認められない場合もあります。
3.物納をする時期によって、損をすることがあります。

物納の順位

1順位 国債、地方債、不動産、船舶
2順位 社債、株式、投資信託
3順位 動産

原則として2順位の財産は、取得した財産の中に、1順位のものがないときに初めて認められます。

物納できない財産

以下に記載しているような、管理や処分が難しい場合は、物納申請の変更を求められます。

不動産
  1. 担保権が設定されていることその他これに準ずる事情がある不動産
  2. 権利の帰属について争いがある不動産
  3. 境界が明らかでない土地
  4. 隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
  5. 他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第210条の規定による通行権の内容が明確でないもの
  6. 借地権の目的となっている土地で、その借地権を有する者が不明であることその他これに類する事情があるもの
  7. 他の不動産(他の不動産の上に存する権利を含みます。)と社会通念上一体として利用されている不動産若しくは利用されるべき不動産又は二以上の者の共有に属する不動産
  8. 耐用年数(所得税法の規定に基づいて定められている耐用年数をいいます。)を経過している建物(通常の使用ができるものを除きます。)
  9. 敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産
  10. その管理又は処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産
  11. 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
  12. 引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産
  13. 地上権、永小作権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定されている不動産で 次に掲げる者がその権利を有しているもの
    ① 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は
      暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 (以下暴力団員等という。)  
    ② 暴力団員等によりその事業活動を支配されている者  
    ③ 法人で暴力団員等を役員等(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事及び監事並びに
      これら以外の者で当該法人の経営に従事している者並びに支配人をいう。)とするもの
株式
  1. 譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていないもの
  2. 譲渡制限株式
  3. 質権その他の担保権の目的となっているもの
  4. 権利の帰属について争いがあるもの
  5. 共有に属するもの(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除きます。)
  6. 暴力団員等によりその事業活動を支配されている株式会社又は暴力団員等を役員(取締役、会計参与、監査役及び執行役をいう。)とする株式会社が発行した株式

※物納できない財産について、より詳しいことは国税庁HP「相続税の物納」をご確認ください。

物納の注意点

現金を老後の万一の資金として残しておき、土地を物納して相続税を納めたいと考える人も、時々いらっしゃいますがこの理屈は税務署には通りません。
今ある現金をはたき、将来の収入を延納の支払いに充当しても、なお相続税が残り納めることができないの人にのみ物納は認められています。
その為、物納した人はその後の生活が大変窮屈なものになるでしょう。
なので実際は、相続後は速やかに現金化し、金銭の一括納付ができる状態にするのが望ましいです。それでも、物納でしか納税が難しい場合、例えば貸家も入居者付きで物納することが、一応は可能な財産ですが、それが古い貸家で低家賃のものだった場合は現実的に困難です。
国の予定した適正家賃、適正地代まで増額することが現実的に難しいからです。
物納を前提として考える場合に関しても、相続が発生する前からしっかりと計画を立て、入居者付きの古い貸家などは長期戦でじっくりと立退き交渉に入り、相続の時には老朽建物を解体撤去して更地で物納する方が評価が楽になり有利になるでしょう。

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