そこで、事前に「成年後見制度」を利用することにより、「財産荒らし」を未然に防ぐことができます。
「成年後見制度」とは、判断力や記憶力が低下してしまった方の「能力の補充」、「権利の保護」、「財産の管理」を目的として平成11年に制定された制度で、能力の劣る方のために「代理人」や「同意を与える者」を家庭裁判所において選任してもらう制度です。
1.法定後見制度
後見人制度
日常生活において、完全に、または、ほとんど判断力や記憶力ない方(「被後見人」といいます。)
のため、「後見人」を家庭裁判所に選任してもらう制度。
「後見人」は、「被後見人」の「法定代理人」となり、ほぼ全ての契約行為や重要な財産の処分などを代わりに行います。したがいまして、「被後見人」は、単独では、そのような行為を行うことができなくなります。
ただし、日用品の購入や選挙権などには影響がありません。
保佐人制度
日常生活において、判断力や記憶力が著しく劣る方(「被保佐人」といいます。)のため、
「保佐人」を家庭裁判所に選任してもらう制度。
「保佐人」は、「被保佐人」の「重要な財産に関する行為(民法13条に規定があります)」に
対して「同意を与え」たり「取消し」たりすること(「同意権」といいます。)ができます。
また、家庭裁判所に対する申し立てにより「重要な財産に関する行為」に対し、「被保佐人」の
同意を得て、「保佐人」に「代理権」を与えることもできます。
したがいまして、「被保佐人」は、単独では、そのような行為を行うことができなくなります。
ただし、日用品の購入や選挙権などには影響がありません。
補助人制度
日常生活において、判断力や記憶力が不十分な方(「被補助人」といいます。)のため、
「補助人」を家庭裁判所に選任してもらう制度。
「補助人」は、「被補助人」の「重要な財産に関する行為(民法13条に規定があります)」の
「一部」に対して「同意権」が与えられます。また、家庭裁判所に対する申し立てにより
「重要な財産に関する行為」に対し、「被補助人」の同意を得て、「補助人」に「代理権」を
与えることもできます。
したがいまして、「被補助人」は、単独では、そのような行為を
行うことができなくなります。
ただし、日用品の購入や選挙権などには影響がありません。
※ いずれを選択するかは、本人の認知の度合いに依ります。
また、任意後見制度を利用する場合には、この制度の適用がありません。
なお、後見人等の選任のためには、通常、6ヶ月程度の時間がかかります。
2.任意後見制度
法定後見制度はどちらかというと、もうすでに認知が進行してしまった方に対して後見人等を
選任してもらうという側面が強く、また、法律により手続等が厳格に定められております。
しかし、任意後見制度は、「認知になる前に予め契約する」ことにより、より運用が緩やかに
なっております。例えば、認知の程度が「補助」レベルであれば活用することができ、
また、権利の制限の内容もよりきめ細やかに定めることができます。
ただし、一定の要件を満たさなくてはなりません。
◆ 任意後見制度を活用するための要件 ◆
- 契約は、本人と任意後見人との間で結び、公正証書で作成しなければならない。
- 本人の能力が劣り、実際に運用するときには任意後見監督人を家庭裁判所において 選任してもらう必要がある。
- 任意後見契約が成立した場合、その旨の登記がなされる。
このように「予め契約する」ことにより、申し立てなどの手続きにかかる時間をかけず、スピーディーに運用することができます。ただし、後見人等に対する費用などは、法定後見制度より高めになる傾向があります。
いずれの制度を利用するにせよ、本人の「権利保護」「財産管理」が可能になり、「財産の逸失」を
未然に防ぐことが出来ます。